なぜ社員が設計するワークスペースは、生産性を高めるのか?

2018.11.10


(引用元)Why Workspaces Designed By Employees Inspire More Productivity

セムコ社では、社員に段階的に意思決定の権限を移譲することで、自主経営型組織への進化を図っていきました。

最初に行ったのが、社員が自ら自分の職場を設計するという取り組みです。

なぜ社員がワークスペースを設計するのか?具体的にどのように行ったのか?の事例を紹介します。

概要

平均的な従業員は、毎日少なくとも8時間職場で過ごします。年間だと2000時間、退職までだと5万時間以上です。彼らは人生のかなりの部分を職場で過ごすため、彼ら自身の作業スペースについて意見を言えるようにする事が重要です。

一般に大半の企業では、作業テーブルとその周辺は自分の好みに合わせてアレンジすることを許可しています。

彼らは家族の写真、奇抜なペンホルダーやカレンダー、小さな鉢植えや一輪挿しなどを通じ、自らの個性と創造性を表現しています。

従業員のために、従業員によって

For The Employees, By The Employees

しかし、これらの小さな自由は、同僚との協業を促進するものではなく、職場環境全体に大きな影響を与えるものでもありません。

ワークスペースを自分流にアレンジするのに充分な創造性を、誰もが持っている訳ではないものの、ワークスペースを全体的にアレンジすることの恩恵は、誰もが享受することができるように留意することが重要です。

職場環境がインスピレーションを与え、そこで働く人々のニーズと結びつくとき、それは仕事の質にプラスの影響を与えます。

生産性と職場環境が密接に結びついていることをより多くの企業が認識する中、より良い作業空間を設計するための投資を見過ごすことは、もはや不可能です。

しかし、こうした決定の多くは、作業チームの主要メンバーとの協議や、人事部への委任の下で行われます。その際に、ワークスペースの設計は会社の決定であるのと同様、従業員の意思決定が必要であるということを、経営陣は忘れているのです。

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ケーススタディ1:再利用されたセムコ社ラウンジ

セムコ社の工場の従業員はある時、リサイクルやゴミに投げ捨てられる材料の再利用をしようとしました。

彼らは、木製のパレット、ダンボール箱、その他のリサイクル資材のような材料を使って、自分たちのためのラウンジスペースを作りました。

業務時間内にくつろぎ、職場で一杯飲んだり、バーベキューをするためのスペースをつくることを計画したのです。また、職場環境を改善するため、工場周辺の空きスペースや庭を美化する計画も立てました。

表面的には、このプロジェクトは利益や貯蓄を会社にもたらすことはないでしょう。

もっと言えば、生産チェーンやその他の業務慣行を最適化する提案でもありませんでした。

そうではなく、職場における労働者のクオリティ・オブ・ライフを向上させることを、まさに意味するものであり、セムコ社はこれを高く評価し奨励する必要があると感じました。

そこで、工場の労働者たちは思い切って、小さなテーブル、椅子、ハンモックの置かれた、休憩やリラックスできるクールでカラフルなラウンジスペースを作ったのです。

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ケーススタディ2:オレンジは新しいブルーです

セムコ社の現在のCEOは、会社が新しい建物を購入し、それを改装したときの事件を思い出します。

彼らは、受付エリアの壁の色について、決定を下さなければなりませんでした。

セムコ社のカラーは青であることから、壁を青く塗ることが明らかに決定されていたでしょう。

しかし、従業員はこの決定への関与を希望する決断をくだし、壁の色を選ぶ3人委員会を設置しました。

CEOは、受付エリアのそばを次に歩いたとき、壁がオレンジ色に塗られたのを目にします!

彼は当惑し、関係する従業員に「なぜ壁をオレンジ色に塗ったのかね?」と尋ねました。

彼が得た返答は、

「自分たちで色を選びたかったのです。だから、私たちはオレンジを選んだのです! 」

CEOが受付に出ることは殆どなく、彼がどんな色を好むかは問題ではないことを、彼はその事件によって認識しました。

従業員はそのスペースで働く必要があり、彼らが好きで、自分の周りに見たい色である必要があるため、それは従業員の選択でなければならないのです!

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大きな影響を伴う小さな変化

Small Changes With Big Impact

この2つの事例は、会社と従業員にとって大きなメリットを生み出す可能性のある、WIN-WINの意思決定の事例です。

率直に言えば、最終損益と日々の管理に対するこれらの決定の影響は、ごくわずかです。

しかし、多くの普通の企業において、オフィススペースをどのようにすべきか最終決断を下すのは、マネージャーや上層部のリーダーです。-彼ら自身がそうしたスペースで仕事をする可能性は、極めて低いのにもかかわらず-

つまり、こうしたトップダウンの決定の実行に会社の資金を費やすのではなく、

自分の職場環境で望むものと望まないものを従業員が決定することによる利益を、むしろ組織は享受することができるのです。

小規模な参加型の意思決定は、従業員間の責任感と当事者意識を高めます。

一般的な考え方とは対照的に、自分たちのワークスペースをどのようにするかを決めることにおいて、従業員が完全な自主性を持つことは、彼らに大きな影響を与える一方、ビジネスにはほとんど影響しません。

そしてこれは、あまり多くの人々の機嫌を損ねず、と同時に関わる利益を保守派に示しつつ、参加型の意思決定の文化を紹介するための、簡単な初めの一歩なのです。

  

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