「セムコスタイル」って、 結局のところ何?(オランダABN銀行での導入事例より)
2019.11.28
先日、SSIの本部があるオランダに行き、セムコスタイルを導入している企業を5社訪問してきました。
そのうちの1社は、オランダに300年前からある大手銀行ABN AMUROで、現在3,500名以上の組織です。
ABN AMROは約1年半前からセムコスタイルを導入しており、今回銀行のManagement Director(役員)の方から導入した背景や結果のプレゼンテーションを聞きましたので、レポートします。
なぜ大手銀行が自己組織化の観点でセムコスタイルを導入したのか?
ABN銀行の経営陣は、組織を変化させる機会を探していました。従来の階層型組織では、絶えず変化する顧客のニーズを満足させるサービスをスピーディーに提供できなくなっていたためです。
経営陣が意図した大きな変化は2つ。
「ビデオバンキング」というオンラインサービスへのデジタルシフト。
もう一つは、上記、階層型ではなく、スピーディーに意思決定ができる「自己組織型(俗にいうティール型、セルフマネジメント型・自主経営型)」への組織モデルのシフトでした。
顧客満足度が劇的に改善!スピーディーで最適なサービスを!
ビデオバンキングによって、顧客はわざわざ銀行の窓口に行かなくても、オンラインでいつでも対面のサービスが受けられます。全てのやり取りはアプリやオンラインで完結できるようになります。
また、自己組織型によって、現場のメンバーはいちいち管理職の承認を仰がなくても、自己判断で意思決定し、顧客にサービスを提供できるようになります。
このシフトにより、現在ABN銀行では、顧客の8割がビデオバンキングを利用し、顧客満足度はこの2年で、約4点から9点(10点満点)に上昇したと言います。
自己組織モデルは、顧客に価値を創ることにフォーカスしている
役員自らが組織モデルの変化を、1枚の図でわかりやすく表していました。
最初の黄色の図は、従来の階層型だった時の縦型の組織モデル。
一番下にあるClient(顧客)から上に、対応チームがあり、上長があり、支社長があり、エリアマネージャーがあり地域ディレクターがいて経営チームがある。という6層の縦割りの組織構造です。
一方、青色で示されるものは自己組織型にシフトした後のモデルで、横型のフラット構造になっています。
そこには、顧客に対して対応するチームがあり、それを支えるスキルコーチとチームコーチがいます。
あとは、経営チームがある3層構造です。
KPIは従来30あったものから7つに絞られ、3500人の組織は、350のユニットにわけられ、25のスキルリード、30人のチームコーチ、30人のスキルコーチのチームによってサポートされます。
そして、全員が、顧客に価値を創ることにフォーカスするようになったと言います。
自己組織型モデル(セムコスタイル)を導入した意味とは?
従来の組織では、顧客を失望させ、官僚主義的で、管理やコントロールが必要で、コストがかかっていました。
自己組織型モデルを導入してからは、よりアジャイル(柔軟)で、起業家精神があり、自己規律とオーナーシップと自主自立があるようになってきたと言います。
実際に導入に関わったメンバーとのQ&Aセッションもあり、導入の際の変化にどう対処したかも聞くことができました。
先日、日本でも、ある経営者は、なぜセムコスタイルを取り入れているのか?の質問に対して、
「顧客の心を鷲掴みにして離さない会社にしたいから」と言っていました。
組織は顧客のためにあり、それが機能するための形態を模索した結果の変革である。
組織を目的にするのではなく、顧客を目的にする。
HRに関わる仕事をしている身として、大切な本質に気づくことができました。
導入事例の詳細は、
でお話ししています。
ライター:Yusuke Nagai